「話すのが苦手」の原因は?
話し方について書かれた本は世の中にたくさんあるのに、「話すことが苦手」という人が多いのはどうしてだろう?
ふと浮かんだこの疑問は、わたしが「伝え方について伝えたい」と考え始めるきっかけのひとつでした。
社会生活を送るうえで、話さなくてはならないシーンはたくさんあります。というより、日常のほとんどは話すこと(または伝えること)のうえに成り立っていますよね。
だから話すことについて悩む人が多いし、それを解決するための情報もあふれている。なのに悩みを解決できず、話すことに苦手意識を持つ人が多い。人前で話す機会を避けたい、できる限り逃げたいと思っている人がたくさんいる…。
どうしてなのでしょうか?
「話すことが苦手」な原因は、多くの場合、とてもシンプルです。
単純に経験が足りないのです。経験が足りないから自信がもてず、話すことへの恐怖が大きく膨らんでしまっているだけなのです。
「人を動かす」「道は開ける」で有名なカーネギーが「話し方入門」という本を書いています。
主にスピーチを例に人前で話すことについて書かれたこの本の第1章のタイトルは「自信と勇気を養う」です。章の終わりはこんな言葉で締めくくられています。
練習を積むこと。これは最も大切なポイントである。恐怖心は自信の欠如が原因であり、自信の欠如は自分の実力を知らないことから来る。そして実力を知らないのは、経験不足の結果である。つまり、成功した経験を積めば、恐怖心は消えるということである。
(話し方入門/D・カーネギー)
わたしは子供のころから人前で話すことが大好きですが、もちろん初めから仕事になるくらい話せたわけではありません。
お前の話は意味がわからない、まったく通じない、と、師や先輩から何度も指摘されました。どうして自分はこんなにへたくそなんだろうと落ち込み、涙し、先に進んでいく仲間に嫉妬していました。
それでもあきらめきれず、アナウンス学校の発表や、少しずつもらい始めた仕事の本番のたびに、できる限りの準備をして「あれだけ準備したんだから大丈夫」とつぶやいて臨んでいました。
そうして少しずつ認められ、お客さまに喜ばれ、「伝えられている」という実感を得ていくうち、自分への呼びかけは「この前もできたんだから大丈夫」、「いつもできているんだから大丈夫」…と変わっていきました。
喋る仕事を始めて16年経った今でも、本番前に心臓がドキドキして吐きそうなくらい緊張することもあります。今のわたしが自分に向かって呼びかける言葉は「落ち着け」です。
とにかく落ち着くこと。それさえできればベストを尽くせると、今はもうわかっています。その拠り所は、さまざまな現場で喋る仕事を続けてきた16年の経験です。
少なくとも日常生活において、話すために重要なのは、声質や滑舌の良さ、生まれ持ったセンス、のようなものよりも、経験です。
「話すことが苦手」という意識からは、練習して経験を積めば、誰でも解放されます。
とはいえ練習する時間がない、面倒、そもそも何をしたらいいのかわからない…という方は、ぜひこのブログでわたしといっしょに「伝え方」について考えていきましょう。
日々小さく始めて経験を積んでいく方法を、わたしのこれまでを振り返り、いまも続く学びを通して発信しますね。
まずはとにかく「話すのが苦手」の原因は経験不足であると認識し、それを解消すると決めること。
これがなによりも大切な一歩です。