2歳児と話すときに気を付けていること ~語順と伝わり方~
大人同士でも会話がかみ合わないことはよくあるのに、まだ満足に喋れない子供との会話はそりゃあ難しいよなぁ、と思いながら育児をしています。
2歳の娘はとてもお喋り好きです。どこまでが現実なのかわからない不思議な内容をせいっぱいの言葉で伝えようとしている様子がとてもかわいいです。
そんな娘に応えたくて、わたしも「2歳の娘に伝わるように話す」ことを意識しています。
最近気づいたのは、語順のことです。
日本語の話し言葉は語順が自由です。状況によって、主語や述語、目的語の順番をあれこれ入れ替えて喋ることができ、適切に入れ替えることでより伝わりやすくなる場合もあります。
でもなんとなく、子供が小さいうちは、書き言葉的な「きちんとした」語順で話しかけるようにしたほうがいいんじゃないかな?と思っていて、できる限りそうしていました。幼児教育を学んだことはありませんので、そのほうが伝わりやすいだろうと経験上なんとなく思ってのことです。
とはいえ、会話は毎日のことですから、つい夫に話しかけるときのように自由な語順で話しかけてしまうこともあります。
すると案の定、娘に伝わらないと感じることが多いのです。自由な語順でなにかを伝えたとき娘は反応せず、書き言葉的な語順で伝え直すとすぐに反応してくれた、ということは何度もあります。
例えば、朝、玄関で靴(くっく)を履きたがらない子供に声をかけるシーンをイメージしてみてください。
「くっくくっく!出かけるよ、履いてくっく。」(自由な語順)と話しかけても靴を履かなかった娘が、
「くっくを履いて、出かけるよ。」(書き言葉的な語順)と言い直すと、すんなり靴を履いてくれた。というようなことです。
文字で見ると「自由な語順」はめちゃめちゃな話し方に見えますが、声に出してみると、そうでもありません。こういう語順でのコミュニケーションは普通のことです。
でも2歳の娘には、あくまでわたしがそう感じたという話なので恐縮ですが、「書き言葉的な語順」で話したときのほうがすんなり伝わるようです。
自由な語順は言葉に勢いがあるので、娘を焦らせ、思考停止させてしまうということもありそうです。その点、書き言葉的な語順は落ち着いた語りかけになるので、受け入れやすいと思います。
ところで、偶然ですが、先日読んだ本にずばり日本語の語順について書かれたくだりがありました。
日本語の最大の特徴は、語順が自由だという点にある。
~中略~
日本語は強調したいものを語頭に持ってきて、何度も繰り返し言うという特徴的な表現形式を持っている。
(わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か/平田オリザ)
この本では、「ランダム」、つまり自由さがコミュニケーションの重要なポイントとされています。その中でも話し言葉のランダムについて語られている章から抜粋させていただきました。
「くっくくっく!出かけるよ、履いてくっく。」という言い方は、まさに、強調したいもの=「くっく」を語頭に持ってきて、繰り返し言っています。
書き言葉的な語順のほうが伝わりやすいというのは、いま言葉を覚え始めたばかりの娘とコミュニケーションの基礎を作っていく段階だからなんですね。成長とともに複雑な表現を理解するようになり、自由な語順でも通じるようになっていくのでしょう。
平田オリザさんが言うように、この自由な表現が日本語の最大の特徴であるならば、せっかく日本に生まれた娘には、その自由さも存分に楽しんでもらえたらいいなと思います。
2歳の娘に何かしてほしいときは、書き言葉的な語順ではっきりと伝える。普段は肩ひじ張らず、日本語らしい自由な語順でコミュニケーションを楽しむ。
そんなかんじでちょうどいいのかな、と思っています。