声と言葉とワーキングマザー

司会の仕事、演劇、ITベンチャー勤務で学んだこと、WM生活を発信します。

読解力と人間らしさ

f:id:mikimegumi:20161117155247j:plain

「文章の意味を理解することができない」AIと、「基礎的な読解力を身につけていない」小中学生とを比較した、興味深い記事がありました。 

bylines.news.yahoo.co.jp


「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」プロジェクトの研究チームが子供たちの読解力テストに着手した、という話題です。

現段階のAIは文章の意味までは理解できないため、デジタル化された教科書や百科事典などから膨大な情報を検索することによって問題の答えを導き出すのだそうです。そのため教科としては国語と英語が不得意で、偏差値にすると50を下回ってしまうのだとか。

ところが、同じ試験を受けた高校生がみなロボットより高得点をとっているかといえば、そうでもありません。

文章の意味を理解できないロボットよりも得点が低い高校生がいるのはどういうことか?この高校生たちは、本当に文章を「読めて」…「意味を理解できて」いるのだろうか?
そのような疑問がスタート地点だったそうです。

 

現在、主に小中学生を対象にすでに予備調査を終え、
1万人を対象にした本格的な調査に着手している。

(中略)

これまでのところ、テストを受験した公立中学校生340人のうち、
約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、
約2割は、基礎的な読解もできていない
ことが明らかになってしまった。

 予備調査ですが、「約2割は、基礎的な読解もできていない」というのは衝撃的ですね。

とはいえ、わたしにとっても決して他人事ではありません。
AIが「文章を読めない」理由と子供たちを観察して感じたこととの共通点について書かれた以下の部分にはどきっとしました。


AIを含むコンピュータが得意なのは、情報とパターンで問題解決すること。
(中略)
膨大な検索を通じて、確率的にありそうなことを選び出す。
これがAIのやっている作業だ。

 

子どもたちを観察していると、
キーワードとパターンで解いている子、読んでいる子が意外にいる。
そこに不安が生じてきた。
キーワードを探す検索、
パターンを覚えて「こういう場合はこうだろう」と確率的に解くやり方では、
莫大な処理速度をもつAIに、いずれ追い越される。

問題の文章を読んでいるのではなく、文中のキーワードと組み合わせパターンで判断してしまっている。理解を伴わない推測にすぎないから、推測が外れると誤った解答をしてしまう、ということですね。

これにはわたしも心当たりがあります。
ネットニュースなどを流し読みするとき、まさに「キーワードとパターンで読んでいる」場合があります。短時間でたくさんの情報に触れることができますが、内容を読み違えていたことに後で気づくこともあります。

ネットニュースくらいではそうそう困ったことにはなりませんが、知らず知らずのうちにきちんと読まない癖がついてしまうと怖いなと思います。

 

考えるフェーズを飛ばし、キーワードとパターンで進めてしまうのが問題なのは、読解に限ったことではありません。

伝えるとき…話すときや書くときにも、自分で腹落ちしていないことをキーワードやパターン頼みで発信してしまうことがあります。勢いのまま、なんとなく使っている言葉、それっぽい言い回しを並べ、「そんな感じ。なんとなくわかるでしょ?」と言わんばかりに締めくくる。これもとても危険です。

自分で考え、消化し、生み出した言葉でなければ、受け手の心を動かすことはできないばかりか、誤解を生み、望まない結果を招きます。


読解力、伝える力ともに、その意味は現代において大きく変わりました。この2つはすでに、仕事の質を高めるための力ではなく、AIを活用し自分はより複雑な仕事をするために最低限必要な力です。AIに仕事を奪われるという言い方をすると恐ろしげですが、わたしたちはより人間らしさを追求して生きていく機会を得たということでもあります。

わたしの場合は、伝える力について学び、考え、伝えることで、わたしが人間らしく生き、誰かが人間らしく生きるお手伝いができると確信しています。

 

AIの話題で人間らしさについて考えられるきっかけをもらえるというのはおもしろいですよね。

伝える力と読解力は切り離せないものですし、この研究に注目していきたいです。