声と言葉とワーキングマザー

司会の仕事、演劇、ITベンチャー勤務で学んだこと、WM生活を発信します。

プレゼンやスピーチで「みなさん」に話しかけてはいけない

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ラジオパーソナリティーになるための訓練をしていたころ、「ラジオは『あなたメディア』である」と教わったのが印象に残っています。

名パーソナリティーや名DJの番組を聴いていると、自分だけに語りかけてくれるように感じますよね。パーソナリティーの顔が見え、まるで友人の話を隣で聞いているように思えてきたりします。

テレビなど他のメディアではあまりないことで、だからラジオは1対1で発信している(かのような)メディアという意味で『あなたメディア』なのだそうです。
だからラジオに出演するときはリスナーさんに「みなさん」と呼びかけてはいけない、という教えでした。


このときは「みなさん」はNGワードのひとつというか表面的な教えとして受け取ってしまったのですが、その後経験を重ねるうち、
これはもっと本質的な話であり、さらにはラジオに限らず司会でもプレゼンでもスピーチでもなんでも大勢の方に向けて話すときにはとても重要な考え方であることに気づきました。

 どんな場であれ、「みなさん」に話しかけてはいけません。

「みなさん」という言葉を使っていたとしても、
「みなさんに話している」という意識はなくさなければ伝わりません。

話しかけている相手は「みなさん」ではなく、
目の前にいる「田中さん」であり「鈴木さん」であり「佐藤さん」であり…
ひとりひとりの「あなた」なのです。

いくら「みなさん」という集合体に伝えようとしても決して伝わりません。
「みなさん」という人はいないのですから。
「みなさん」のなかの「あなた」ひとりひとりに話しかける意識がなければ伝わらないのです。

プレゼンやスピーチをしていて、なんだか上滑りしているなーとか、聞き手との実際の距離は近いのに遠くにいるように感じるとき、あなたは「みなさん」に話してしまっている可能性があります。

聞き手ひとりひとりのことを思い、ひとりひとりの目を反応を見て話しかける、その繰り返しでしか、ひとりがたくさんあつまった全体に伝えることはできません。


聞き手を意識しすぎてしまいそうで怖いという方もいるでしょうか?
だいじょうぶ、多くの場合、聞き手は話し手が思っているよりもずっと好意的です。

そして、慣れによって恐怖を乗り越えるしかありません。
聞き手を無視したばかりに誰にも伝わらないことのほうが、ずっとずっと怖いことなのですから。