説明上手になるための一番かんたんな方法
養成所でイベント司会者のレッスンを受けていたとき、こんな課題がありました。
ここは夏祭りのイベント会場です。
あなたは司会者として本部で場内アナウンスを担当しています。
そこに携帯電話の落し物が届きました。
さあ、どのように会場アナウンスをしますか?
携帯電話(当時はスマートフォンはなかった…)を手に、レッスン生は順番に会場アナウンスに挑戦したのですが…
「ドコモの携帯電話の落し物がありました。お心当たりのある方は…」
「ドコモの携帯なんて持ってる人たくさんいるでしょ!もっと情報を盛り込まないと」
「…ドコモの白い携帯電話を…」
「それでもまだたくさんいるでしょ」
「…ドコモの白い携帯電話で、キティちゃんのストラップが付いていて…えーと…」
(講師役の先輩司会者さんとのやりとりはまだまだ続く…)
携帯電話のように身近なものであっても、誰にでもわかるように描写するというのは難しいものです。
けれど、自分がいま手に持っているものすら言葉で説明できないようでは、目の前にないものや、まして意見や考えのように形すらないものを言葉にできるわけがないですよね。
あなたならあなたの携帯電話やスマートフォンの特徴をどのように伝えますか?
身の回りにあるもの、日常のできごとを片っ端から描写することは、説明上手、話し上手への一番の近道です。
わたしは25歳から3年間、札幌のFMラジオ局で朝の情報番組を週5日担当していました。
冒頭に5分ほどフリートークの時間があるのですが、毎日特別なネタがあるわけではありません。
そこで、自宅からラジオ局までの通勤路で見かけた季節を感じるものを言葉で描写しリスナーさんに伝えるということをよくやっていました。
風が冷たくなりましたね。軒先に巣を作っているハトも、寒さをしのぐように身を寄せ合っていました…
車のフロントガラスに霜が降りていました。よく見ると、端のほうに小さなハートの落書きがあります。近所の子供が描いたのでしょうか…
特別なことは言わなくても、日常を丁寧に描くことで親しみを感じていただけたようで、リスナーさんには好評でした。
そしてこの何気ない風景をラジオの電波に乗せられるトークにするという作業の繰り返しは、わたしの言語能力の訓練にもなっていました。
ひとりごとでもかまわないので、目にした光景、体験したこと、なんでも言葉にしてみてください。
意外と難しいと感じると思います。
でも、これを積み重ねることで、あなたの説明する力、伝える力は確実に鍛えられます。
続けていれば、そのうち何かの折に他人から「あなたの説明はわかりやすいですね」と言われて効果を感じること、うけあいですよ。